県指定の文化財に認定された、外山区報恩寺の阿弥陀様がいよいよ修復の時を迎えました。立派な大像がお座りになる には小さすぎたお堂で長い年月外山区を見守り続けたそのお姿は、あまりにも嘆かわしいもので、一刻も早い修復が望ま れていました。 今回、念願の修復に当たり報恩寺をご出立されるに際し、先ずは阿弥陀様のお性根抜きの為の読経が3日間に渡り行わ れました。その最終日である4月28日、外山区民の皆さんも参加し、阿弥陀様とのしばしのお別れを惜しみつつ、阿弥陀様 を見上げて合掌されました。 |
最後に、外山区報恩寺の朱亨庵主様より、これまで阿弥陀様の修復へとの想いから寄せられたご奉賛を、修復費用の一部 にと外山区区長に手渡され、区民の皆様へのお礼を述べられました。ご奉賛の中には、区民の皆様をはじめ、たくさんの方 が書かれた1枚300円の写経代金も含まれており、それを受け取られた区長は、『皆様の想いの込もった貴重なご奉賛を、 この立派な阿弥陀様を修復により後世に残す為、大切に使わせて頂きます。』と約束されました。 |
5月に入り、ゴールデンウィークが明けた5月6日、日陰が恋しくなる程の上天気にみまわれました。いよいよ、阿弥陀様の ご出立です。財団法人美術院国宝修理部の職員の方々が白装束に身を包み、強く触れると、ほろほろと、ほどけてしまい そうな阿弥陀様を慎重に慎重に、しかし手慣れた様子で、ご出立の準備を進めていかれます。 |
職員の方々に自信を委ね安心されたような、穏やかなお顔の阿弥陀様でした。その阿弥陀様の前には移動の際の台座となる 神輿の櫓のような木の枠が置かれました。さあ、準備は整いました。 |
阿弥陀様が、ふわっと浮き上がった瞬間、周りで見守っている区民の方々から『ぅわぁっ!!』と、声が上がりました。 しかしそこから先は、本当に少しずつ慎重に作業される職員の方々の緊張が私たちにも伝わり、職員の方々の息使いに 合わせるように呼吸し、ただただ、じーっと阿弥陀様を見つめる事しかできなくなりました。でも、そこはプロの職員の方々の事、 阿弥陀様は無事、下ろされました。見上げてきた阿弥陀様が、目の前に降りて来られると、改めてその大きさに圧倒されました。 |
こうして、住み慣れたお堂から出られた阿弥陀様。阿弥陀様のご出立という、この大事な日にこの天候。 阿弥陀様のお力を感じずにはいられませんでした。 広い外に出られ、春の日差しを浴びられ、思いっきり深呼吸していらっしゃるかの様です。 今まで窮屈そうだったお堂も、阿弥陀様が出て行かれると、なんだかガランと、広く感じます。 トラックの荷台で揺れる阿弥陀様を見送りながら、なんだか寂しく思うのは、私だけでしょうか・・・ 修復期間は、約1年半位。痛みを修復された阿弥陀様のお戻りを、区民の方々と共に心待ちにして居ります。 そして、今日この場に立ち会えた事に、心から感謝して居ります。 |